早めが肝心!子どもの近視の最新治療
最終編集日:2025/9/8
黒板の文字がぼやけて見える、テレビの字幕が読みにくい……など、ある日突然、子どもの視力の低下に気づくことも少なくありません。
実は、裸眼視力が1.0未満の小学生は年々増加しており、子どもの近視は世界的にも深刻な課題となっています。
一方、近年では近視の進行を抑える新たな治療法が登場し、話題になっています。
子どもの近視について、原因や進行のしくみを知り、早めに対処してあげましょう。
●近視はなぜ起こる?
近視とは、近くは見えるのに遠くが見えにくい状態のこと。多くは「眼軸長(がんじくちょう)」と呼ばれる、眼球の奥行きが伸びることで起こります。真ん丸な眼球が楕円形に変形することで、ピントが合わなくなってしまうのです。小学生から中学生にかけて身長が伸びる成長期は、眼軸長も伸びやすく、近視が進みやすい時期といわれています。
近視には遺伝的な要因もありますが、近年の増加ぶりを考えると、生活環境が大きく影響していると考えられます。屋外活動の減少、スマートフォンやタブレット、パソコンなど、デジタル機器に囲まれた生活も、近視を招く要因のひとつです。
●点眼薬・コンタクトレンズなど治療法が進化中
近年、近視の進行を抑えるための治療が国内でも始まっています。
2024年12月には、国内で初めて近視の進行を抑制する点眼薬(目薬)が厚生労働省に承認され、2025年4月より販売が始まりました。「アトロピン硫酸塩水和物」を有効成分とする薬です。現在は保険適応外の自由診療ですが、医師と相談しながら治療を進めることで、子どもの近視の進行をゆるやかにする効果が期待できます。
さらに、2025年7月には、同じく近視の進行を抑制するコンタクトレンズが国内で初めて承認されました。子どもの使用を想定したもので、日中の装用により近視の進行を50%以上抑制する効果があるとされています。
治療の選択肢が増えたことで、子どもの近視治療に新たな道筋が見えてきましたが、どの治療も「進行を抑える」ことが目的であり、一度伸びた眼軸長を元に戻すことはできません。
そのため、視力の低下を防ぐ生活習慣を心がけることが非常に重要になります。特に注意したいのが、近視の発症年齢が早いほど、強度近視になるリスクが高まるということです。強度近視になると、将来的に網膜剥離や緑内障などの視力を失う可能性のある目の病気を引き起こすリスクが高くなります。
●今日からできる視力低下を防ぐ習慣
子どもの視力低下を防ぐためには、大人のまなざしとちょっとした声かけが大切です。
家庭でもできる工夫を、今日から取り入れていきましょう。
・屋外で過ごす時間を意識する
屋外で過ごす時間が長い子どもほど、近視の発症リスクが下がることがわかっています。これは、太陽に含まれる特定の波長が、近視の進行抑制に関連しているといわれているからです。
目標は1日2時間以上。直接日光を浴びる必要はなく、木陰や日陰でかまいません。通学時の移動、休憩時間、外遊びなどで、合計2時間以上を外で過ごすことがポイントです。
・30分に一度は休憩を
勉強や読書をするときは、目との距離を30㎝以上離すようにしましょう。そして、30分ごとに休憩し、20秒以上遠くを見ることで目の緊張をほぐします。机上の明るさにも注意して、薄暗いところで本や画面を見ないように気をつけましょう。
視力の低下は、子どもの学習や生活に大きな影響を及ぼすことがあります。
日々のケアや早めの治療などで、子どもの「見える」を守っていきましょう。
監修
慶應義塾大学医学部 眼科学教室 麹町大通り眼科 院長
森 紀和子