黄砂で咳や息苦しさ、対策は?
最終編集日:2026/3/16
春になると、目のかゆみや鼻水、くしゃみ、皮膚のかゆみや湿疹、咳、息苦しさ、声のかすれなど、さまざまな不調を感じる人が増えます。これらの症状は「花粉症」と症状が重なることが多いのですが、同時期に飛来する黄砂の影響が関与している可能性も考えられます。黄砂そのものによる刺激症状に加え、喘息や花粉症などのアレルギー疾患の症状を悪化させる要因となることも指摘されています。ここでは、黄砂が健康に及ぼす影響とその対策について解説します。
●黄砂はただの砂ではなく、大気汚染物質が付着している
黄砂とは、中国内陸部の砂漠地帯の砂や土壌の微粒子が強風によって上空に巻き上げられ、偏西風に乗って日本まで飛来する現象です。主に春(2月から5月頃)、秋に観測され、空がかすむ、洗濯物や車が汚れるといった影響のほか、人体への影響も懸念されています。
黄砂が注目される理由は、単なる砂粒ではなく、飛来の過程で大気汚染物質(PM2.5)や細菌・真菌などの微生物を付着させている点で、これらの粒子は人体の皮膚や気道の粘膜を刺激し、アレルギー症状を悪化させる可能性があります。黄砂の粒径には幅があり、数μmから10μm程度の粒子が含まれます。日本で観測される粒子の平均径は4μm程度と報告されています。(1μm〈マイクロメートル〉は1mmの1000分の1の大きさ)このような微小粒子は、吸い込んでしまうと肺の奥まで到達する可能性があります。
なお、スギ花粉そのものは約20〜30μmと比較的大きい粒子ですが、花粉症を引き起こす抗原粒子は1μm前後の微小粒子です。春先には、こうした花粉関連粒子と黄砂が同時に大気中に存在することがあり、複合的な曝露が症状の悪化に関与している可能性が示唆されています。
なお、PM2.5は2.5μm以下の粒子状物質の総称で、その成分は炭素や硫黄、金属など、さまざまな大気汚染物質を含みます。
●アレルギー症状や呼吸器の症状を起こし、循環器にも影響
黄砂の飛来時には、次のような症状や健康影響が報告されています。
【アレルギー症状】
目のかゆみ、鼻水、鼻づまり、くしゃみ、皮膚のかゆみや発赤などの症状がみられることがあります。それまで明らかなアレルギー症状がなかった人にも、症状が現れる場合があります。また、花粉症をはじめとする既存のアレルギー疾患の症状が、黄砂の影響で悪化することも指摘されています。これは、黄砂や関連する粒子が鼻やのどの粘膜に付着して刺激することで、炎症反応が強まることが一因と考えられています。同様に、金属アレルギーを有する人でも、黄砂の多い日に皮膚症状が強く現れるケースも報告されています。
【呼吸器の症状】
黄砂粒子が吸入され肺に入り込んで炎症を起こすと、咳や痰、息苦しさなどの症状が現れます。特に、気管支喘息や慢性閉塞性肺疾患(COPD)などの呼吸器疾患を有する人では、症状が悪化する可能性があります。一方で、こうした呼吸器への基礎疾患のない人でも、呼吸器症状を自覚することがあるので注意が必要です。
【循環器への影響】
黄砂の飛来日には、心筋梗塞や脳梗塞などの循環器疾患による救急搬送や入院が増加する傾向が、日本や海外の疫学研究で報告されています。これらの知見から、短期的な循環器への影響が示唆されています。
●黄砂をできるだけ吸い込まない、体に付着させない対策を
黄砂による健康影響を軽減するためには、吸入や皮膚への付着をできるだけ減らすことが基本となります。気象庁などが発表している黄砂情報を確認し、飛来量が多い日は不要不急の外出を控えることが望まれます。
外出する場合には、不織布マスクやメガネを着用し、マスクと顔(特に鼻)の間に隙間があると黄砂が侵入するため、マスクのノーズフィットワイヤーを鼻に添って曲げて、しっかり密着させましょう。
皮膚への黄砂の付着を減らすためには、帽子や長袖の着用に加え、保湿などのスキンケアも有効と考えられます。必要に応じて日焼け止めクリームを使用して皮膚にバリアを張ることで、粒子の直接的な付着をある程度抑える効果も期待できます。
外出から帰ったら、すぐに手洗いや洗顔、うがいを行い、衣類を着替えることで、室内への黄砂の持ち込みを減らせます。シャワーを浴びることも有効です。
衣類についた黄砂は通常の洗濯で除去できますが、黄砂が飛来している時期は、洗濯物の外干しを控え、室内干しを基本とすることが推奨されます。
なお、症状が持続する場合や強い症状がみられる場合には、かかりつけ医や呼吸器内科、耳鼻咽喉科、眼科、皮膚科、アレルギー科などを受診し、専門医に相談しましょう。
監修
聖路加国際大学大学院 公衆衛生学研究科 准教授
大西一成