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前立腺がん
ぜんりつせんがん

最終編集日:2026/2/3

概要

前立腺がんは男性特有の臓器である前立腺に発生するがんで、50歳を過ぎると発症のリスクが高くなります。前立腺がんの年間患者数は10万人ほどで男性のがん罹患数の第1位であるほか、罹患数は増え続けています。

ほかのがんに比べて進行が緩やかで、高齢者では命に影響しないまま経過するケースも少なくありません。そのため、前立腺がんの治療を早急に開始せず、定期的な検査で経過をみる「監視療法」が行われることもあります。しかし、寿命が長い日本人は元気なうちに病気が進行し死に至るケースもあるため、監視療法をとるか治療を行うかの見極めは重要といえるでしょう。

また、前立腺がんは治療後5年以上経過してから再発することもあるため、5年生存率だけでなく10年生存率も治療成績の指標として重要です。

前立腺がんのスクリーニング(有病者のふるい分け)には血液中の前立腺特異抗原(PSA)測定が有用で、自治体によっては検査費用の補助を行っている場合もあるので、確認してみるとよいでしょう。

原因

前立腺がんの発症リスクとしては、脂肪の多い食生活、喫煙、運動不足、メタボリック症候群、肥満などが指摘されています。前立腺がんはさまざまな悪性腫瘍の中でも遺伝的要因が強いとされ、父親・兄弟・息子などの「第一度近親者」に前立腺がん患者さんが1人いる場合、家族に患者さんがいない人と比べて前立腺がんを発症する可能性が約2.5倍に高まるとされています。また、若年で前立腺がんを発症しやすくなる点にも注意が必要です。

前立腺がん
前立腺がん

症状

前立腺肥大症が頻尿や排尿障害などの自覚症状が出やすいのに比べて、前立腺がんは早期の段階では自覚症状がみられないことがほとんどです。がんが進行すると、排尿障害、血尿、排尿痛などが現れるほか、骨転移を起こすと腰痛などの症状がみられることがあります。

検査・診断

問診の後、血液中のPSA値が高い場合は前立腺がんを疑い、さらにくわしい検査を行います。前立腺がん検診では、PSAの基準値として全年齢で4.0 ng/mLが推奨されていますが、年齢に応じて50〜64歳は3.0 ng/mL、65〜69歳は3.5 ng/mL、70歳以上は4.0 ng/mLとする方法も提案されています。さらに、phiなどの診断補助マーカーが活用される場合もあります。

前立腺がんの存在が強く疑われた場合には、直腸診(前立腺の触診)、MRI検査、経直腸前立腺超音波検査(TRUS)などを行い、がんの大きさや広がりを評価し、最終的には前立腺針生検で確定診断を行います。前立腺針生検では、通常10〜12本程度の組織を採取しますが、MRI所見や前立腺の大きさによっては、生検の本数が増加します。

前立腺がんの診断がついた場合には、CT、骨シンチグラフィ、MRIなどで転移の有無を調べます。


●進行度診断

前立腺がんの進行は、腫瘍の広がり・深さ(進行にしたがってT0~T4で表す)、リンパ節転移の有無(N0:なし、N1:あり)、遠隔転移の有無(M0:なし、M1:あり)の3つの視点から分類する「TNM分類」に加えて、がんの悪性度を表す「グリソンスコア」が用いられます。

グリソンスコアは、前立腺針生検で採取した病理組織を精査し、前立腺がんの悪性度を評価して点数化した指標(スコア)です。グリソンスコア6以下は低悪性度、7は中間、8以上は高悪性度とされます。

治療

前立腺がんの治療には、手術療法だけではなく放射線療法が活用されることが多い点が特徴です。


●監視療法(経過観察)

前立腺がんの中でも進行リスクが低いと考えられる場合には、監視療法が選択されることがあります。具体的には、PSA値が10 ng/mL以下で、がんが前立腺内にとどまり(臨床病期T2以下)、生検でがんが確認された本数が少なく(2本以下)、悪性度が低い(グリソンスコア3+4=7以下)ケースが監視療法の条件に当てはまります。さらに、前立腺の大きさを考慮したPSA密度(PSAD)が0.2未満、あるいは0.15未満であることも目安とされます。監視療法が選択された場合には、定期的に外来を受診し、PSA採血や画像検査を通じて前立腺がんの病状を評価します。


●放射線療法(外部照射、組織内照射)

前立腺がんの放射線治療では、体外からX線をあてる「外照射治療」、放射線を発する物質を前立腺の内部に留置する「組織内照射」、そして外照射治療と組織内照射を組み合わせて行われることが一般的です。放射線治療は手術治療と比べて、勃起障害や失禁のリスクが少ないことが特徴ですが、治療後早期に起こる急性期合併症(排尿・排便障害など)や、治療後数年経ってから生じる晩期合併症(直腸出血、血尿など)に注意しなければなりません。しかし、進行・再発リスクが高い前立腺がん症例では、ホルモン療法と組み合わせることで手術治療を上回る治療成績が示されており、前立腺がん治療において放射線治療は魅力的な治療選択肢といえます。

組織内照射で用いられる一般的な治療は密封小線源療法で、放射性物質を「シード」と呼ばれるチタン製の小さなカプセルに密封して前立腺に埋め込む治療です。埋め込まれたシードは治療後1年で放射線を発しなくなりますが、安全性を考慮して、治療後は妊婦や子どもとの近距離での長時間接触を避けるよう指導されます。


また、粒子線治療(陽子線治療および重粒子線治療)が根治的放射線治療の選択肢として選ばれることもあります。


●手術療法(前立腺全摘術)

低リスク群と中間リスク群でもっともよい適応とされており、出血量が少なく身体への負担が少ない手術支援ロボットを用いた手術が主流になっています。手術の合併症としては尿失禁と勃起障害に注意が必要ですが、尿失禁の頻度についてはロボット手術の登場によって大幅に改善されました。


●ホルモン療法

前立腺がんは男性ホルモン(テストステロン)の影響を受けるため、テストステロンの分泌や作用を抑え、がんの増殖を抑制する内分泌療法が行われます。高リスク群での手術や放射線治療との併用、転移がん、全身状態が悪く放射線治療や手術が難しい場合に適応されます。


●化学療法(抗がん剤治療)・免疫療法

進行した前立腺がんやホルモン療法が効かなくなった前立腺がんに対して、タキサン系の抗がん剤や分子標的薬、条件によっては免疫チェックポイント阻害薬が用いられることがあります。また、骨に転移したがんに対しては放射性物質を点滴投与し、その放射性物質が骨転移部位に集まり、そこで局所的に放射線を発して治療効果を発揮する方法が行われることもあります。

セルフケア

予防

前立腺がんは限局がんとして見つかった場合、10年生存率は90%近くに達する悪性腫瘍です。早期発見により根治の可能性が高まり、治療の選択肢も広がるため、PSA検査を活用して前立腺がんの早期発見に努めましょう。

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監修

大船中央病院 泌尿器科

齋藤 史郎/山中 弘行