甲状腺中毒症・甲状腺機能亢進症こうじょうせんちゅうどくしょう・こうじょうせんきのうこうしんしょう
最終編集日:2025/12/18
概要
甲状腺は、のどぼとけから少し下にあり、甲状腺ホルモンを産生し、全身の代謝を調節します。甲状腺中毒症とは、血液中の甲状腺のホルモン濃度が過剰になった状態を指し、「ホルモンが過剰に分泌されている場合」と「甲状腺内のホルモンが破壊により一時的に血液中に過剰に流れ出ている場合」の両方を含む総称です。原因としては、バセドウ病、無痛性(破壊性)甲状腺炎、甲状腺腫などがあります。
原因
甲状腺中毒症を起こす代表疾患が「バセドウ病」です。自己免疫性疾患のひとつで、自己免疫性の甲状腺刺激抗体(TRAb)が甲状腺を過剰に刺激し、甲状腺ホルモンを作りすぎることで発症します。女性に多いことが特徴です。
一方、無痛性(破壊性)甲状腺炎では、ホルモンが「作られすぎる」のではなく、甲状腺組織の破壊により、蓄えられていたホルモンが血中に漏れ出ることで甲状腺中毒症を呈します。
そのほか、甲状腺刺激ホルモンが過剰になる下垂体腫瘍、甲状腺結節が自律的にホルモンを産生する甲状腺腫なども原因となります。

症状
甲状腺ホルモンは、代謝の活性化や成長を促す働きがあるため、甲状腺ホルモンの上昇により、動悸・心拍数の増加、血圧上昇、多汗、下痢、体重減少、疲れやすいのに眠れない、指のふるえ、イライラなどが現れます。バセドウ病では、眼球突出(眼症)を認めることがあります。また、甲状腺に腫れやしこりを感じることもあります。
検査・診断
血液検査でTSHが低値、FT3・FT4が高値であれば、甲状腺中毒症と診断されます。次に、原因疾患を鑑別するために、
・TRAb(甲状腺刺激抗体)の測定:バセドウ病の診断に有用
・超音波検査:甲状腺の血流増加や甲状腺の腫大の有無、結節の有無などの確認
・必要に応じて、アイソトープ(RI)摂取率の検査:破壊性か機能亢進かの鑑別
などを行います。
甲状腺の腫瘍が疑われる場合には、CTやMRIなどの画像検査を追加します。
治療
治療は原因によって異なります。
●バセドウ病
・β遮断薬で動悸などの症状を抑える
・抗甲状腺薬(メチマゾール、プロピオチオウラシル)で甲状腺ホルモンの生成を抑制
・効果が不十分、または再発を繰り返す場合はアイソトープ治療(放射線ヨウ素)
・手術療法(巨大甲状腺腺腫、妊娠や授乳などで抗甲状腺薬が使いにくい場合)
●無痛性甲状腺炎
抗甲状腺薬は使用しません。治療の基本は経過観察であり、症状が強い場合は、β遮断薬を使用します。
●中毒性結節性甲状腺腫
アイソトープ治療または手術治療を選択します。
セルフケア
予防
甲状腺中毒症では代謝が亢進して疲労しやすいため、十分な休養を確保し、過労を避けることが大切です。ストレスや睡眠不足は症状を悪化させることがあります。バセドウ病では喫煙が眼症を悪化させるため、できるだけ禁煙をすすめます。
監修
医療法人青泉会下北沢病院 糖尿病センター長
富田益臣